仮設住宅などでのディアコニア(奉仕、支援)報告書
2015 年 4 月 29 日


遅れてしまいましたが、放射能被災地で活動を続けられている、石川和宏さんの報告を皆さまにご報告させていただきます。
放射能被災の事柄は、これからが支援の本番です。
その働きは、長く、その場に寄り添うことが求められます。
現在の、現地の方々の息遣いが聞こえてくるような報告です。
ご一読ください。

(2015年6月5日 東北ヘルプ理事 阿部頌栄)

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仮設住宅などでのディアコニア報告書

2015 年 4 月 29 日 石川和宏
*報告期間:2015 年 4 月 9 日~4 月 21 日

【1】二本松市 旧平石小学校仮設住宅(4 月 10 日)
・住民は、全員が浪江町民で、二本松市に避難した原発被災・避難者
・この仮設は、2 回目の訪問
・提供したのは DVD 上映・カフェ・軽食・庖丁研ぎ
・自治会長の天野さんを中心に古着を集め活用するプロジェクトを行っている。 この働きについては、最近の河北新報にも掲載された。
・協力者の方々から戴いた大量の古着(段ボール箱 10 個相当)をお届けした。
・参加者約 10 名
・包丁研ぎ約 12 本 10 世帯分
・刃が欠けた庖丁の依頼があった。時間と道具の都合で、サマリタンハウスに戻ってから仕上げて送った。「大事にしていた庖丁なので大変有り難い」とお礼の電話を頂いた。(写真1、2)
・この仮設は、ボランティアが多い(自治会長談)。自治会長の人柄の良さと「終日集会所に詰めている」という熱心さが、多くのボランティアの再訪をもたらしていると推測した。
・多くの仮設住宅では、集会が終わると集会所の鍵を掛ける。また、自治会長さんが勤めていて日中は不在の所もある。同じ被災者(住民)であっても自治会長の人となりで、ボランティアの多寡が決まってしまうのは、いささか可愛そうに思う。「自治会長のなり手がいない」ということもしばしば耳にするので、この点は改善が求められる。
・一方で、自治会長とは別に、飯舘村など有給の「管理人」を置いている自治体もある。上の問題はなくなるが、管理人さんが「関所」になることもある。


【2】南相馬市 小池長沼仮設住宅(西集会所)(4 月 12 日) (写真3)
・住民は、南相馬市の小高区の原発避難者がほとんどで、中には津波の被害にも遭われた方もおられた。
・この仮設は、2 回目の訪問。自治会長さんから電話で「みんなが楽しみにして待っているから」と懇請され再訪した。
・提供したのは、DVD 上映・カフェ・軽食・庖丁研ぎ
・参加者名約 12 名(皆さん花見に出掛けたとかで、参加者は少なかった。)
・包丁研ぎ 10 本 8 世帯分


【3】相馬市 柚木仮設住宅(4 月 17 日)
後藤一子牧師と協働 同行:岡本真理(名古屋岩の上教会)
(写真4)
・この仮設は、後藤一子牧師が継続して奉仕している。私も何度目かの訪問になる。
・住民は、主に相馬市磯部地区の津波被災者
・私の仕事は、DVD上映とコーヒー
・参加者 13 名(内男性 2 名)
・包丁研ぎ 28 本 14 世帯
・お聴きした話
◇この仮設は来年 3 月で廃止される。今度の連休に相当数の方が去られるだろう。
◇移転先を探しているが、空きが無い。除染の人で埋まっている。
◇出られないので、また別の仮設に行くしかない。友達とも離れることになる。
◇工務店が注文が多く、家を建てることもできない。


【4】福島市松川町 松川第 1 仮設住宅(4 月 18 日)
同行:石川千鶴子・岡本真理

・全員が飯舘村民 飯舘村から福島市に避難した原発被災者の方々
・居住者は、118 戸 187 人 飯舘村の仮設(合計 9 ヶ所)では 3 番目の規模
・この仮設には飯舘村民向けデイサービス「サポートセンターあずまっぺ」が併設されている。 そこの庖丁も 3 本研がせてもらった。
・提供したのは、DVD 上映・カフェ・軽食・庖丁研ぎ
・また、今回初めて「腹話術(「泣いた赤鬼」)」を披露した。これも皆さんに楽しんで頂けた。
・石川千鶴子(妻)と岡本真理(三女)が手伝ってくれた。
・参加者 38 名(内男性 9 名、男性参加者数としては新記録)
・包丁研ぎ 48 本(内ハサミ 4 本) 26 世帯
・子供は 2 人しかいない。一人が遊びに来てくれた。「お友だちは?」と聞いたところ、「いない」という返事だった。原発事故が無ければ、近所に大勢の友達がいたはず。
・たくさんの人にテーブル並べなどを手伝って頂いた。
・集会所が、DVD 上映とカフェを別の場所でできるほど広い。自治会長さんが行政に頼んで実現したと聞いた。
・お聴きした話

◇飯舘村は、年内に除染が終わる計画だ。
◇百姓をしているが、帰っても(環境汚染があり)農業はできない。
◇牛を飼っていた。みんな放した。
◇帰る見込みはない。







【5】南相馬市 原町区社協一日デイケアー施設「元気塾」(4 月 16 日) (写真5、6)
・山元町に滞在中に、南相馬市の社協から連絡が入り、社協施設内で行われている「ニコニコ元気塾」での奉仕に招請された。

ニコニコ元気塾とは… (南相馬市のホームページより)
ニコニコ元気塾は、南相馬市鹿島区に住む 65 歳以上の虚弱高齢者の閉じこもり防止と介護予防、そして地域の人々の生きがいづくりを目的に、南相 馬市社協鹿島区福祉サービスセンターが平成 13 年から主催する自主事業です。現在、鹿島区に在住する 38 人が登録しており、鹿島保健センター、地域包括支援センター、ボランティアとの協力により運営されています。

・提供したのは、DVD 上映・カフェ・庖丁研ぎ
・参加者名 32 名(最高齢 102 歳)70%の方は女性。皆さん一度は原発事故後に避難を経験された方。
・一人暮らしの人も多い。
・南相馬市は、11,729 人が市外に避難している(市発表、本年 4 月 23 日現在)。若い家族が避難したために「独居」になった方も多いと推測している。
・仮設住宅に住んでいる方もいる。
・包丁研ぎ 4 本(社協内の福祉施設のもの) 他に社協事務所のハサミ 11 本依頼された。
・年からすれば、私も「塾生」相当です。
・お聴きした話

◇夫は津波で流された。あの時死ねば良かったと思う。仏壇に毎日手を合わせ、「今日も守ってください」と祈っている。
◇(「また来ます」に対して)、今度来る時まで生きているかどうか







・原発被災地の社協は、「同労者」だと思いますので、南相馬市では、今後も連携した活動をしたいと願っています。
・取りあえず次回は、5 月 7 日に決まりました。


【6】南相馬市仲町児童館(高篠館長)(4 月 17 日)
・名古屋岩の上教会 2015 年 5 月連休ディアコニア 「太陽の村」一日ピクニック
南相馬市 仲町児童センターの子供たちへの説明会

・経緯
名古屋岩の上教会(以下教会)から子供を遊ばせるプログラムの対象者紹介依頼があり、原発被災者で子供のいるところを探した。旧知の南相馬市社協の主任主事より、社協の関連先である掲記児童センターの紹介と仲介を頂いた。 高篠館長と直接話が出来、「早いほうがいいだろう」という助言を頂き、本日に説明会を開いて頂いた。

・結果
説明書(兼申込書)を 40 部持参し、1 年から3年生の子供たち約 30 名の前で説明した。申込書は、児童センターの先生が帰る前に配って頂けることになった。

児童館にいる子供たちとは…
南相馬市石神第二小学校に通う1年生から6年生で、仲町周辺の児童。
親が働いている。
児童センターにいるのは45名
石神第ニ小学校の生徒数は2百数十人、1年生だけで40名いる。
この小学校は、もう一校(太田小学校)と並び、原発北川ではもっとも原発に近い小学校。

・子供たちの反応
元気な子どもたち1~3年生 約30人に約20分ほど説明した。
(4年生から6年生は、まだ児童館に来ておらず、説明書兼申込書を配布して頂く)
質問を受けたところ、たくさんの手が挙がった。

・高篠館長との面談
30 分ほど早く到着したが、じっくり話しを聞いて頂いた。
ご自身は学校教員から館長に転籍された方。「教員ゆえ、原発事故時に避難はしなかった」と自ら語っておられた。
一通りこちらの氏素性、計画概要を説明した。
支援の実績に対しては、「これだけやって来たのは大変ですね」と評価していただいた。
地元の人はいないかと聞かれたが、「私です」と回答。
申し込み期限を聞かれたが、「一応今週中くらいと考えているが、先着順ということもあるので」と回答した。

・放射能汚染(線量)と子どもの関係(館長との面談より)
小学校から児童館までは全員バスで送り込まれる。被爆を避けるためである。
「敷地内の公園では0.113μSv/hあったが(写真7)、外で遊ばせるのか?」と質問。 「その通りだ。割り切っている」「公園は2度除染をした。半分に減って今の線量だ」
「学校でも外遊びをするのか?」と質問。
去年の10月までは施設内だった。その後外も使うようになった。
児童館の子ども達は、全員一回は原発避難の経験がある。1年生は2歳くらいのときの経験になる。
南相馬市の小学生は、避難先から戻ったのは半分以下。中学生は60%戻った。
(線量の高い)ここに住んでいるのは、親の仕事の事情によるもので、そのようなこと(被曝)と折り合いをつけた結果である。

・石川の感想(当時)
もしかして20人を越えるかもしれない。早ければ明日中にも申込みがあるかもしれない。
20名に達せず、10名前後であっても、他の施設の子どもを紹介していただけると思います。
敷地内の公園の線量表示「0.113μSv/h」を見た時は衝撃を受けました。児童館の庭の表示は「0.101μSv/h」でした。しかも2度除染後です。
(0.113μSv/hは24時間外に居たとすると年間0.87mSv/hの追加被曝となる)。
4 月 29 日現在の申込者は 16 名
(写真8は、児童館にいた子供たちにスーパーボールすくいの練習(?)をさせているところ。この中に4日の参加申込者もいる。右端が岡本真理)


【7】南相馬市鹿島区社協(濱名主任主事)打合せ(4 月 16 日・20 日)
1)名古屋岩の上教会ディアコニア「太陽の村」一日ピクニックの応募者集めについて
・市の地域振興課が仮設住宅の担当をしている。次回はこのルートも検討してみたい。
・社協職員の子弟にも声を掛けて頂き、その場で1名の申込があった。社協の方の子供も放射線量に気を遣っている。
2)復興住宅支援について
・南相馬市原町駅近くに復興住宅がたくさん完成しつつある。一部は入居済み。
・葛西清藏牧師の仲介で地元の大浦さんが店舗2回の空き部屋の提供を申し出て下さっている。
・仮設から復興住宅に移った後も、新たに「孤立」などの問題があり、ケアが必要。社協もその認識をしているが未だ手が回っていない。
・「企画をすれば応援します。」と言って頂いた。(社協の「後援」は、他所とのバランス上難しい?)


【8】まとめ
1)今回出会った方々105 名 (庖丁・ハサミ 110 本 58 世帯分)
2)どこでも好評を戴き、再訪の要請も多い。
3)原発から北と西に逃れた被災者をお訪ねし、取りあえず「南相馬市(27 ヶ所)・浪江町(31)・飯舘村(9)の仮設住宅(合計 67 ヶ所)を一回りしたい」と願っているが、再訪を入れると道のりは遠い。(いわき市など原発の南側に逃れた方は、途中の線量を気にしなくても良く、首都圏から近いということもあり、支援者が多いと聞くので、対象からは除く。)
4)社協などの関係先、自治会長・管理人さんとの関係も回を重ねるごとに深まってきているので、これを大切にし、更に広げて被災者に近づいていきたい。
5)楽しい時間を提供すると共に、皆さんの今の苦境に同情し連帯する。「私自身も支援を支援してくれる関係者も、皆さんのことを決して忘れてはいない」ことを示し続けていきたい。





写真1 研ぎ前の包丁


写真2 研ぎ後


写真3 南相馬市小池長沼仮設住宅(西集会所)


写真4 福島市松川町松川第一仮設住宅


写真5 南相馬市原町区社協一日デイケアー施設「元気塾」


写真6 南相馬市原町区社協一日デイケアー施設「元気塾」


写真7 児童館に隣接した公園の線量表示


写真8 児童館で遊ぶ子ども達

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